会報「北のみなと」No.52より
今日この頃

 20代の初めの頃は、映画観賞や様々なジャズのレ コードを買い集め楽しんでいましたが、結婚した 29歳を境目にやや休眠状態となっていました。しかし、 公務員時代の終わり頃(平成2年〜9年までの7年 間)は、単身赴任の生活でしたので、赴任地(留萌・ 稚内・苫小牧)と札幌の我が家との往復は専らマイ カーを使い、深夜などに移動することが多かったの で、安全運転の為にカセットテープにダビングした ジャズを聴きながらハンドルを握っていたことを懐 かしく思っています。

 昨年の夏頃から、レコード棚に静かに眠っている ものを時々眺めて聴くことが多くなりました。レコ ードは1950年代のはじめ頃から60年代のものが多 く、一般に「モダンジャズ」と呼ばれているジャン ルのものです。
 いま使っているシステムコンポは、主として息子 の為に当時としては少し奮発して大きな出力のもの を購入したのですが、昨年の12月頃不調なことがあ ってメー力ーに依頼し点検・整備をしました。つい でにレコードプレーヤーの今後のことも考慮して予 備の「純正レコード針」を買っておきました。 休みの時や夜の時間には、二階の部屋で雑誌など を読みながらレコードやCDをかけジャズの世界に のめりこんでいる今日この頃です。
よく行く店

 私が勤務している支店(南21条西8丁目)の直ぐ 近くに、若いご夫婦がやっている小さな中華食堂 「りよう」という店があり、美味しい中華料理が食 べられます。ひる時には、私の好きな本格的中華ラ ーメンなどを食べています。頻度は週に1〜2度位 ですが、ひる時の混み具合を考えて12時30分を過ぎ た頃に行くことにしています。  店内のBGMは普通の音楽番組ですが、店の奥に 壁掛け風のビニールケースに入れたジャズのCDが 15枚に纏められて飾られています。CDは若い奥さ ん好みのジャズボーカルの割合が多く、時々何枚か 入れ替える事があるので壁掛けの雰囲気が変化しま す。ご夫婦そろってジャズが好きだということが解 かり、この頃は食事を終え客がマバラになったのを 見計らってから少しの会話と、たまにはお互いの CDを貸し借りする楽しみが増えました。
 支店からもう少し足を運ぶと、レストラン風のモ ダンな蕎麦屋「そば甚」という店があります。この 店は味がよいと評判のところで、遠くから車で来る 客も多いので、ひる時は満席状態になります。私は いつも12時半を過ぎた頃に行くことにしています。
 この店は、営業時間中はいつも程よい音量でモダン ジャズが流れています。有線放送から流していると のことで、好物のそばの味とモダンジャズのとり合 わせは、私にとって至福のときなのです。

ジャズは非ヨーロッパ的音楽

 ご承知のように、ジャズはアメリカに移植された アフリカ黒人によって生まれました。音楽的にはア フリカ的なものと、ヨーロッパ(クラシック)的な ものとの合成からなりたっています。 ヨーロッパ音楽でいう「音楽の三要素」とは、メ ロディー、リズム、ハーモニーであります。 ところがアフリカ音楽にハーモニーはありません。 その替わりにサウンドがあります。
 サウンドとは広い意味の音色のことで、発声を含みます。 即ち、メロディー、リズム、サウンドがアフリカ音楽の三要素なの です。
 アフリカの部族の中には「ドラム・卜ーク」とい って、数百メートル離れた仲間と太鼓だけで会話す る技能を持つ者があります。アフリカの言葉がもつ リズムと抑揚がそれを可能にしているのです。また、 話し言葉は微妙なサウンドをもち、そのサウンドの 変化にも意味があるといいます。
 ジャズはヨーロッパの楽器で演奏されますが、こ の中にメロディー、リズム、サウンドはいろいろな かたちで入りこんできています。ジャズにハーモニ ーの概念が入ってきたのは、少しあとのことです。
 ハーモニーは1920年から40年にかけて徐々に重要性 を増してきましたが、プリミティブ(原始的)な黒 人音楽にはハーモニーはなかった。そこで初期ジャ ズの三要素もメ□ディー、リズム、サウンドであり、 ヨーロッパ音楽とは異なる音楽であったということ ができます。
 ジャズの楽器は歌声に替わるものです。 肉声を楽器に乗せたものです。だから、ルイ・アー ムストロングのトランペットは、彼のヴォーカルと 全く同じサウンドを持っています。
 ジャズの楽器がヨーロッパ音楽と同じものを用い ながら、吹奏法が全く異なるのはそのためです。だ から音楽学校で教えるような歌唱法や吹奏法を用い ません。要するにヨーロッパ音楽ではないのです。

さあ、これからが重要な纏めです。 ジャズの特質は、
 @ヨーロッパ音楽で規正できない音楽であること
 Aサウンドが非常に重要なこと…なのです。

懐かしいジャズ喫茶

少し硬い話になってしまいましたが、話を元に戻 します。

 昭和45年3月下旬、函館から札幌に転勤になった 頃の話ですが、狸小路4丁目の近くに「東映」という名の映画館があり、 その横の地下に「JAMAlCA」というジャズ喫茶店がありました。 当時は、独身でしたので、散歩がてらに街に出かけ時々立ち 寄った場所でした。
 最近、ジャズに関する雑誌で目にとまったのです が、店の創業は1961年、40年以上の歴史を誇る老舗 で、名前の由来は最高級コーヒー豆ブルーマウンテ ンの産地「ジャマイカ」から採ったとのことです。
 現在の店(89年に移転)は市内中央区南3条西5丁目「3条美松ビル4F」に在り、 かねてから行ってみたいと思っていましたところ、 今年の1月下旬、 会社の行事があったおりに立ち寄ってみました。
 夜の早い時間であったせいか、客は数人でしたが、 私は、空いているカウンターの席に陣取ってビール を飲み始めました。少し時間が経った頃、隣に座っ ている50代くらいと思われる男性客も水割りを飲ん でいて、どちらからともなくジャズ談義が始まった のでした。男性客は小学校の教諭と言っていました が、いろいろな話になって楽しい時間だった。これ からも、客同志で共通の話が出来そうなので、たま にはこの店に行ってジャズを楽しむことにしたい。