会報「北のみなと」No.54より

国土交通省
北海道開発局
港湾空港部長
小泉 信男

 この度、7月1日付けで北海道開発局の港湾空港部長を拝命いた しました。  北海道港湾空港建設協会並びに会員の皆様には、常日頃から私ど もの港湾空港整備事業に対して、暖かいご支援とご協力をいただい ておりますことに、心より感謝申し上げます。改めまして、今後と もどうぞよろしくお願いいたします。
 前職は、1年間と言う短い期間ではありましたが、東北地方整備 局の副局長という職務を経験させていただきました。東北の唯一の 政令指定都市仙台は、杜の都の名の通り緑豊かな美しい街であり、 職務を通じて知り合った東北人の印象は、口数は少なく一見取っ付 きにくそうですが実際は人情味あふれる人々でした。

 東北地方の社会資本の整備と利用に関する情報は、日々溢れるほ ど手元に届けられ、その情報の評価が地元の職員とほぼ同一なもの になるのに半年が必要でした。特に全国紙以外に各県ごとに新聞社 があり、その記事の傾向や歴史と文化に関する地元の常識は一筋縄 では行かない奥深さがありました。
一方、東北6県の県庁職員(港湾管理者)や港湾所在市の首長との 行政上のやり取りは、初めてでもあり真剣勝負の気概で臨みました。 自分のスタンスとして「地域とともに歩む」との考えが基本にあり、意 見交換はできる限り相手の本音を引き出すことに気をつかいました。  東北は北海道に似て、長引く経済の低迷や公共投資削減の影響等 により、雇用情勢など地域経済は依然として厳しい環境にあり、地 域の自立・再生についての課題は北海道と同様なものがありました。 東北の建設業界人も、近年の公共事業を巡る環境の大激動に戸惑い ながらも、情報のアンテナを張り巡らせて即時の対応を怠らない、 そんな緊張感が漂っていました。東北人の粘り強さを垣間見る想い がしました。

 さて、地元北海道に戻り、港湾空港整備事業について平成17年度 の概算要求のとりまとめの時期を迎えましたが、地域の活力を回復 しつつ、北海道の持つ様々な可能性を最大限発揮できるように、経 済の活性化に資する事業等を重点的に推進することとしています。 次に、港湾整備に関してのポイントだけを紹介したいと思います。

 平成14年4月に新たな時代の北海道における港湾の役割とおおむ ね10〜15年後の展望を示した「21世紀の北海道港湾ビジョン」が策 定されており、更に北海道の港湾取扱貨物量全体の約7割を占める 道央4港(室蘭港・苫小牧港・小樽港・石狩湾新港)について本年 5月に「道央4港振興ビジョン」が策定されていることを受けて、 その目標に則った要求となっています。具体的には、整備の緊急性、 地域の二ーズ等を踏まえ、概算要求の中心となる行政課題としては、

@物流の効率化のための多目的外貿ターミナル・内貿ユニットロードターミナル
A観光振興のための旅客船バース
B生物環境等との調和のための釧路港エコポートモデル事業。
C昨年の十勝沖地震等を踏まえた耐震強化岸壁
D広域静脈物流の拠点港としてのリサイクルポートの形成
   などであります。

 一方、北海道の港湾管理者のほとんどが財政基盤の脆弱な市町村 であり、北海道の長引く景気低迷による税収の減少や地方交付税の 大幅な削減が市町村財政に大きく影響を与え、必要な港湾整備に対 して管理者負担金を十分に支出できない状況が生じています。そも そも港湾の整備効果は、市町村行政界に留まらず広域に及ぶものが 多く、港湾の整備の遅れは北海道経済や市民生活等に悪い影響を及 ぼしかねません。

 北海道港湾が抱えるこのような課題について港湾を取り巻く関係 者がきちんと認識するとともに、港湾管理等のあり方についても検 討を加えていくなどの取組みが求められており、北海道開発局港湾 空港部としても、このような共通認識の醸成のための勉強会をまず 立ち上げていく所存であります。
特に、現在北海道では道州制特区の提案が北海道開発局の今後のあ り方を含む政治課題となっており、国と地方の適切な役割分担などに 強い関心を抱いているところです。現行の行政システムにより戦後の 北海道開発行政が押し進められてきたという歴史的経緯のある問題 だけに、息の長い取組みになるかも知れませんが、私自身「今こそ 東北人の粘り強さを見習おう」との思いで努力したいと考えていま す。

 また、概算要求に示した整備課題を着実に進めていくためにも、 港湾の利用振興は重要であり、貿協会会員の皆様の地元市町村にお けるオピニオンリーダーとしての各種活動には心強いものがありま す。特に、今年度より港湾整備・利用促進に関する地元の有識者・ 利用者等との意見交換会の開催を進めていただいており、当方とし てもその成果に期待しているところであります。関係者のご努力に 心より感謝いたします。

 最後になりましたが、貴協会並びに会員の皆様のご活躍とご発展 を祈念申し上げて、就任のご挨拶といたします。