会報「北のみなと」No.54より
 2004年8月29日、日曜日、朝6時30分、331人のアスリートが増毛港を スタートしました。
 第18回日本海オロロンライントライアスロン国際大会の始まりです。 本大会は日本最長であり、アスリート仲間では、天売島にだけ生息する 「オロロン鳥」にちなんで「オロロン」の愛称で親しまれております。

 トライアスロンは、日本では、1981年(昭和56年)に烏取県米子市 で行われた「皆生(かいけ)トライアスロン」が最初とされています。  世界的にレースの形が整ったのは、1978年2月にアメリカ・ハワイ州オ アフ島で行われた通称「アイアンマン大会」だといわれております。  この大会は、スイム3.84キロメートル、バイク179.2キロメートル、ラ ン42.195キロメートルで行われたそうです。それ以来この3種目とそれ ぞれの距離が一応の基準となり、3種目ともこれを越える距離の競技大 会の完走者は、アイアンマン(鉄人)と呼ばれるようになったと聞いてお ります。

 トライアスロンという言葉は、「競技」を意味するギリシャ語のアスロ ンに「3」を意味する接頭語のトリを付けて創ら れたものだそうです。したがってトライアスロン を厳密に言葉の通り解釈すると、3つの異なる競 技を続けて行えばよいことになります。

 昭和60年11月、私は、札幌の「中の島」の自転 車クラブを3人の仲間と共に訪れておりました。  なぜなら、当時、北海道にはトライアスロン大会に参加したアスリー トはおられなかったからです。昭和61年8月、我々は留萌管内の仲間と 共に、無謀にも「トライアスロンモニターランド」と呼んで、上記クラ ブアスリート9名と共に朝6時から夜12時までの時間を設定し、増毛町 温水プールでスイムを、バイクは、増毛町から幌延町へそこでU夕ーン をし遠別町へ、ランは遠別町から羽幌町を目指し、6名が18時間以内で 完走しました。
 北海道の日本海沿岸の海水温は、8月に入り20度を少し超えます。大 会は、8月末と決まりました。
 昭和62年第1回「日本海オロロンライントライアスロン国際大会」応 募者は900名弱、夜間照明の関係で、最終的に警察から許可をいただいた のは、最大で220名でした。  アスリートの方々は、旅費は自前で、さらに参加料1万5千円を支払 うのです。又、大会実行委員長ですが、無理に留萌観光連盟の会長であ った本間増毛町長にお願いいたしました。 経緯が悪かったのか、もっぱら挨拶は、若いバカな運営委員長 である私の役目となりましたが、今思い出しても顔が赤くなります。
増毛港を泳ぐアスリートたち
 第1回の私の大会挨拶ですが、真顔で「海水を2度飲むと溺れる事があると 聞きました。選手の皆様、決して死なないで下さい」です。アスリート の皆様は、最初ビックリされ、すぐ大声で笑い拍手をくださいました。 その後、ある選手が、私のそばにきて、「トライの大会は、第1回はあっ ても、第2回大会はないのが当たり前で、続く可能性が甘いのだから選 手も第1回大会を大切にしている」と告げてくれました。
 スイムの終わった増毛港で、徹夜が続いた仲間と 共に、後片付けをしていると、私の後ろに増毛町長が立っておられ、 突然、大粒の涙を目に浮かべ握手を求められました。
 私は、第2回大会 をもって大役をおろさせてもらいましたが、仲間と共に第18回も会場作 りの手伝いをさせてもらっております。
 振り返ると、雨が降ると会場の地盤が軟弱なため車も人も動けず、 コンパネを敷いて設営していた300坪の会場は、第5回大会以降からは、 プレジャーボート・スポットという公共事業のおかげで、現在は多様性 をもつボートの陸上施設となり、すばらしい会場となりました。  結果として、私にとっては、何でもない日常生活そのものであっても、 そうでない人にとっては、実に珍しく、楽しいものになり得るのだと、 そしてそのことが「観光」なのだと思うようになりました。
 増毛町の花火大会の開催は数少ないですが会場は増毛港を使用します。 会場では花火を観る町民の為に、漁組は沖止めをかけ、漁組青年部は朝 から新鮮な魚介類を選別し、ビアパーティーを開催します。
 増毛町には、大きな観光客用イベントが2つあります。20年ぐらい前 からで、「えび祭り」と、「秋味祭り」です。両方とも最初は200人程度の観 光客で10年ぐらい続いておりましたが、えび祭りは2004年には3万人に 増え、甘えび販売量は当日の東京築地市場の5倍ぐらいになり、全国一 のえび祭りではないかと思います。

増毛町出身三國シェフ

前浜でとれた甘えび
 今回は、フランス料理で有名な増毛町出身の三國清三(きよみ)さんによる、500 食限定“甘えびカレーが披露され、東京から奥様と娘さんが駆け付け、 三國一家にとっても楽しい一日となったようです。  9月26日(日)、秋味祭りは初めて増毛港で開催されました。8千人の観 光客でしたが、本当によく来ていただいたと思います。
 えび祭りでは、駐車場が少ない「リバーサイド公園」で開催されてい るためお客様から苦情ばかりよく言われます。「こんな田舎で、大きいイ ベントはするな」と、えび祭りも来年からは増毛港も使用する可能性が 強くなっておりますが、それでお客様が満足されるでしょうか…?
 観光は、観光客にとって外部から見ての魅力の拡大も大切だと思いま すが、地元の生活、地元の生産活動を優先しながら行うことが、私にと って、より大切だと思うのです。
 つまり、田舎では、日常の地元仲間の生産活動の側を、ニコニコ笑いな がら声をかけて通り過ぎて行く観光客があり、それが観光だと考えます。