会報「北のみなと」No.58より

    信楽焼土瓶(加藤隆彦 作)               備前焼船徳利 高さ35cm (南燦窯)

●器に興味

  サーバーの容量を確かめて中身を取り出し自分ながら満足…。これはコンピューターとは何もつながりの無いお話です。
  分かりやすく言うと焼酎用サーバーのコックをひねり、お気に入りのぐい呑みに注ぎ一人悦に入っている、私。
  実は、このサーバーは私が懇意にしている窯元が制作したもので、形・色合いとも気に入り取り寄せたものです。このように我が家はこの窯元をはじめ他の作家の器を集め、日常使い、又飾って眺め楽しんでいます。
 
  私が器に興味を持ったのは、13 年前、知り合いの住職から備前焼の壷を見せていただき、重厚で深みのある色彩や窯変(ようへん) (窯の中で、焼成中に素地や釉薬(ゆうやく)の成分が化学変化を起こし、表面にさまざまな色の変化が生じること)の魅力に惹かれてからです。ちょうどその頃、女房も以前から気に入った器を趣味で少しずつ集めていました。お互い、共通な趣味を持ったことが拍車をかけたのか、それからは器に関する本、ビデオを見、道内の窯元、デパート、専門店、展示会などに良く足を運んだものです。でも、住職が見せてくれた備前焼が頭から離れない、それならいっそのこと窯場に行って見ようと思い立ったのです。

●焼き物巡り

そして、平成7年秋、夫婦の焼き物巡り第一歩。目的地は備前で途中「萩焼」を見るコース。少ない予算と日程で数多く見て回ろうと観光は二の次ぎで、分刻みの慌ただしい旅が始まりました。まず、作品を見るなら地元の伝統工芸館や陶芸美術館に限るとそちらに向かいました。展示作品は、人間国宝や有名な作家のものが多く、私の浅い知識でも素晴らしい作品だと感激しました。しかし、買い物モードになると何でこんなに高い?(作家もの)この値段の違いは?貧乏人の性分がもろに出たものです。また、この体験は焼き物に対する興味を一層深め、楽しい思い出を与えてくれ、その後の焼き物巡りに更なる意欲をかき立てる結果となったのです。

  それからと言うものは、全国の有名な陶・磁器を見ようと夫婦の焼き物巡りが始まり、これまで北関東から九州まで十数カ所を訪ねました。たかが器を見るのに高い旅費をかけて行かなくてもと言う方もいるが、私も時々そう思います。でも見るだけならそれでいいでしょうが、その土地の歴史や風土に触れるのもまた楽しいものです。

  私は全般に土ものが好きです。なかでも備前焼が気に入っています。独特の黒い土を高温で焼き締めるだけ。窯の中でおこるさまざまな変化、釉薬を掛けていないため土肌そのままの味、ざらっとした感触、使い込んでいくと独特のつやとまろやかさが出て、なかなか味わい深いものであり、また渋い色合いが好きですね。我が家では食器を始め器は備前焼がほとんどです。

  旅の思い出を少々、備前の宿でのこと、先代の女将が人間国宝の故「藤原啓」と親交があったことから食事に使われている器も備前焼ばかり、惜しげもなく1個45万円から数万円のぐい呑みでお酒を飲み、穴子づくしの料理と最高のもてなしを受けました。やはりお酒も料理も器で決まりですね。

  次に、倉敷の骨董店のことです。そこで目に付いた一品が骨董品ではないが、形・焼き色とも素晴らしいぐい呑みが、人間国宝の作で十万円の値が付いていました。旅の初日から大金を出すのもどうかと迷い結局買わないで帰ってきたが、あの時買ってくればと今でも残念に思っている一品でした。

  このように、焼き物巡りは楽しく、新しい発見・反省、その都度少しずつ知識をつけながら、私どもの旅はまだまだ続けるつもりです。


伊万里の里(佐賀県伊万里市大川内川)

 ●最後に、器について私なりに心 がけている  ことを付け加えて終わりにします。

・まず多くの種類のものを置い ている店をいくつか回ってみる。
たくさんの器を見ている うちに自分の好きなもの、欲しいものがはっきりする。(衝 動買いを避ける)

・展示会等はまめに行く。

・窯場には、予め知識を持って行く。 自分の好みに合った店を見つける。

・手に持って使いやすいかどう か調べる。重さ、手触り、□ をつける縁の部分の厚みや感触。(*名品は注意)