会報「北のみなと」No.59より

  追直漁港では、平成6年度から「つ くり育てる漁業」と「ふれあい漁港」を目指した『Mランド計画』の整備を進めている。
  このうち、「つくり育てる漁業」への対応として、基幹的な漁業であるホタテ貝養殖漁業の労働時間の短縮と漁業環境への配慮を目的として、平成8年度から沖合人工島の整備を行っている。人工島の整備により背後には静穏水域が創出され、クロソイ養殖漁業とホタテ貝養殖漁業の拡大が可能となる。
  これまでに人工島の埋立工事が完了し、平成17年度から人工島へのアクセス施設となる橋梁工事が始まった。
  追直漁港における橋脚形式の選定にあたっては、建設地点の諸条件(水深・地盤)、上部工の荷重規模、施工性および周辺海域への影響について考慮した結果、ジャケット工法の採用に至った。ジャケット工法は、海洋プラットフォームの急速施工工法として開発されたものであり、鋼管で製作された立体トラス構造物を鋼管杭で海底に固定し、外力に抵抗する工法である。既に設計手法が確立されていることから、全世界で数千基の建設実績がある。国内においては、近年、高い水平剛性と短工期、高品質、高い耐震性能といったジャケット構造の特長を活かし、シーバース、桟橋、防波堤などの港湾・漁港構造物に適用される事例が増加している。今回道路橋の海上橋脚としては日本初の実績となった。 追直漁港におけるジャケット工法採用による優位性は、以下のとおりである。

@現場工期の短縮
   海上工事がその近傍で展開している養殖漁業に及ぼす影響を低減させるため、短期間で施工することが必要であった。本工法では、部材をすべて工場製作し、その後、ヤードでの組立、海上輸送、現場据付という工程となるため、海上工事の現場工期が大幅に短縮となる。

A建設コストの縮減
   現場での仮設工事費が不要となり、他の形式に比べて大幅なコスト縮減が可能となる。

B周辺環壊への影響抑制
   海底地盤の掘削、埋立等による地形改変の規模が極めで小さくなり、周辺環境への影響を最小限に抑えることが可能となる。

  昨年度に実施した橋脚の据付にあたっては、この後の工程である上部工の架設と橋面工工事に影響を及ぼさないよう、特に据付精度に留意した。これは橋脚据付箇所が港内に位置するものの港口に近いことから、据付の際に波浪の影響を受けるためである。
  今年度以降、橋梁上部工の製作・架設、橋梁アプローチ部と人工地盤の整備を順次進め、『Mランド計画』の中核施設である人工島が増養殖支援基地として完成するのは、平成23 年度の予定である。