会報「北のみなと」No.61より

野鳥には、まったく興味がありませんでした。

  きっかけは、平成3年の釧路勤務時代です。たまたま、知り合いだったS氏が霧多布港の工事現場を担当しており、S氏に誘われ浜中町湯沸岬で“珍しい水鳥エトピリカ"を撮影したのが最初でした。 S氏は、野鳥撮影が趣味でカメラも数台・超望遠レンズから広角レンズまでフル装備の機材で、素晴らしい写真をたくさん撮っていました。
  国内でエトピリカは、湯沸岬と根室のユルリ島でしか見ることができないため、記念に写真かビデオに記録したいと考えました。スチール写真であれば機材等に相当なお金がかかるため、ビデオと決め中古のビデオカメラ(以下カメラ)と三脚を購入しました。
  7月の撮影デビュー初日、自宅を午前3時出発、湯沸岬到着午前 4時30分、すでにカメラマンが数人待機していました。さっそくカメラを設置、ひたすら待つこと約 3時間。海上沖の方からハトより、ちょっと大きめの真っ黒い鳥がすごいスピードで飛んできて岬から約100mほど離れた小さな島の巣穴に入っていった。目視時間、数十秒。図鑑で見たとおりの白い顔・目の上から黄白色の飾り羽・縦に平たい赤いクチバシ、一瞬であったがエトピリカであることを確認でき感動した。この後、数時間待ったがエトピリカは巣穴から出ることなく姿を見ることはできなかった。家に帰り、さっそくワクワクしながらビデオを再生した。結果は、カメラブレとピンボケの見苦しい映像(10秒位)であった。なぜかすごく悔しくこの次こそ、との思いを強く覚えています。この日を境に、しっかり野鳥撮影にハマリました。


平成 3 年 8 月 撮影 エトピリカ

どんな趣味でも個人それぞれいろいろな考えや思いがあって続けていると思います。私の場合、

■ 撮影現場に着きカメラを設置 した瞬間から、仕事のことが頭より消え
    て気分転換ができる。
■ 鮮やかな色をした、目立つ野鳥がいます。一方、目立たない地味な
    野鳥もいます。しかし、どちらもよく観察すると大変美しいです。野鳥
    は、弱肉強食の世界で必死に生きています。こんな厳しい自然環境
    で生活しているためか、言葉で、うまく説明できない美しさがあります。
    こんなところに惹きつけられた。
■ 小学生のころから、つい最近 まで釣りをしていました。釣りの醍醐味
    は、なんといっても、大物の魚が竿にかかったときです。撮影は、野鳥
    が近くに来るのをひたすら待ちます。”待つこと”が趣味といっても過言
    ではありません。野鳥がカメラ前方に飛んで来たときは、思わず興奮し
    ます。捕ると撮るの違いはありますが、うまく撮れたときは大魚を釣った
    ときと同じような感じになり、満足感がある。

大雑把ですが上記3つの理由により続けています。

  私の撮影サイクルは4月下旬春の宮島沼(美唄市)に始まり、10 月上旬秋の宮島沼でほぼ終わります。11月以降は、ほとんど出かけることはありません。
  この撮影期問中は、仲間の情報や撮影記録のメモ帳を参考に天候の良い休日は、ほとんど家に居ることはありません。近郊の公園・野原・森林や道内各地へ出かけ小鳥・猛禽類の野鳥・水鳥を撮っていますが、特にこだわっているのは宮島沼です。宮島沼は、マガンが春は本州(宮城県伊豆沼)からシベリヤヘ、秋はシベリヤから本州へ渡る途中で体力をつけるため、おおよそ多いときは4〜5万羽が一時期立ち寄る休憩地です。毎朝、日の出前マガンは餌を採るため地響きのような羽音をたてて一斉に飛び立ち、赤く染まった空は一面マガンで埋めつくされます。こんな素晴らしいシーンを撮り続けています。しかし、納得できる映像がなかなか撮れません。それは、@技量が未熟である。A 半年毎の撮影になるため勘が鈍っている。B迫力ある飛び立ちに圧倒され、分かっていてもついついカメラを動かしすぎる等々…。
  躍動感あふれるマガンが飛び立つ瞬間の光景は、撮影対象として最適であると考えており宮島沼に通っています。

  この趣味も今年で17年目になります。始めたころは、カメラと三脚で1kg程度でした。カメラも5 台目で三脚・交換レンズも充実し、これら機材を含めた重量が20kgちかくにもなってしまいました。一方、体力は年をかさねるごとに落ち込んでいます。この機材を担ぎながら野原をさまよい歩くのは、なかなかシンドイ年齢になってきました。撮りためたテープもかなりの数になりました。体の自由が思うようにならなくなったら、編集方面へ趣味を方向転換しようかなどと考えています。
  野鳥撮影とは、“鳥さん”の私生活すべてを、のぞき見し、時には撮影用テントに入って盗撮することです。仮に人間社会で、このような行為をしたならば大変な罪を犯していることになります。このため”鳥さん”達には、心の中で大変申し訳ないと思っており、そろそろ足を洗わなければと考えています。しかし、意に反し早く雪が解け、早く春が来ないかな、と思っています。


平成18年 6月 撮影 フクロウ雛