会報「北のみなと」No.62より


北海道開発局
港湾空港部長

山口 清一

  このたび、6月1日付で北海道開発局港湾空港部長を拝命いたしました。どうぞよろしくお願いいたします。
  北海道港湾空港建設協会並びに会員の皆様には、常日頃から私どもの実施する港湾空港整備事業に対しご支援とご協力を賜り厚く御礼申し上げます。

  さて、私の前任地は中部地方整備局であります。皆様ご承知のとおり中部地方は現在日本でもっとも元気の良い地域といわれています。名古屋港の港湾取扱貨物量も毎年増大し日本一の取扱量を誇っていますし、名古屋駅前を中心に高層ビルの建築も林立し、整備局の実施する営繕工事も応募者がいなく再公募せざるを得ないような状況です。

  また、市内の有効求人倍率も2倍を超えるほど人手不足になっています。 中部地方に勤務して感じましたのは、このような中部の元気を支えている要因のひとつは着実なインフラ整備にあるということです。愛知万博にあわせるように、東海環状自動車道が開通し、中部国際空港セントレアが開港するとともに、名古屋港飛島地区のスーパー中枢港湾プロジェクトの次世代コンテナターミナルも一部供用開始しました。また、日本一のダムである徳山ダムも概成し、中部地域の安全安心を確かなものにしています。このような中部地方の関係者の方のたゆまぬ努力が、今の「中部の元気」を現実のものとしているのです。

  全国的には経済は緩やかな回復基調を維持しているといわれていますが、北海道の経済状況はまだまだ厳しいようです。しかし、このような時期だからこそ長期的な視点に立って必要な投資を着実に行うことが将来の北海道の発展のために必要なのではないでしょうか。
  今年は各種の長期計画の策定作業が始まっています。 まず、国土形成計画です。皆様ご存知のとおり、今までの全国総合開発計画を、法律改正して改めたもので、今年度半ばには全国計画を策定し、その後一年程度かけて広域地方計画というブロック計画を策定します。北海道の場合は従来からの北海道総合開発計画がこれに相当し、現在検討が始められたところです。今回の国土形成計画の大きな特徴のひとつは、わが国のそれぞれの地域が東京のような大都市を経由することなく成長著しい東アジアなどの諸外国と直接結びつきお互いに発展できるような国土形成を図っていくことであります。

  数年前、私も国土計画局に勤務し本計画の初期段階に携わらせていただきました。このとき、政策研究大学院大学の森地先生が、国土形成計画のこの理念を次の様なたとえで説明されました。「地域が直接アジアと結びつくということは、例えば、北海道の魅力は決して日本人だけがすばらしいと思うものではない。アジア諸国のすべての人々は、北海道を訪れたら、その自然、文化、食べ物、歴史などに感銘を受けるであろう。すなわち、北海道という地域はアジア主体の宝として育て、アジアの人々が来訪しやすいような国土形成を図っていく必要がある。」多少私の思い込みの部分がありますが、おおむねこのようなお話を聞かせていただきました。現在、北海道の国際観光客数が急速に増えていますが、まさに現実にそのようになりつつあるのではないでしょうか。今後の北海道の港湾・空港の整備を考える上で重要な視点であると思います。

  次が社会資本整備重点計画です。現在の重点計画は本年度までで、平成20年度から新たな計画がスタートします。現在各分野ごとに社会資本整備審議会並びに交通政策審議会で議論が進められています。港湾分野の現計画ではスーパー中枢港湾の育成が大きな柱でしたが、現在検討が進められているなかでは、スーパー中枢港湾の育成に加え、地方地域の国際競争力の強化のための施策が議論されています。首相のイニシアティブで策定された「アジアゲートウェイ構想」と相まって、北海道の国際競争力強化のための港湾空港整備のあり方について、昨年度設置された北海道国際物流戦略チームなどで議論を深め、戦略的な取り組みを進める必要があります。

  最後が海洋基本法の制定です。わが国には今まで海洋に関する包括的な法律は存在しませんでした。近年の海洋権益に関する周辺諸国の対応、それに対するわが国の基本的施策の欠如などの視点から法制定の機運が高まり、議員立法により今国会で成立されたものです。今後担当大臣が決まるなど、わが国の海洋に関する施策実施の総合的な体制が整って行くとともに、海洋立国としての諸施策の展開が加速されてくるものと思われます。北海道にとっても水産資源をはじめとする周辺海域の活用は大変重要な課題です。このためのしっかりとした港湾・漁港の整備を進める必要があります。

  以上のように、本年度は北海道の将来のあり方を規定する重要な長期計画の策定が進められる年であり、港湾・空港分野につきましても、森地先生の言われる「北海道はアジアの宝」というような大きな視点を持って、国土形成計画の施策のひとつであるシームレスアジアの実現を目指した北海道の交通ネットワークのあり方について検討してまいりたいと考えています。どうぞ皆様のご支援、ご指導を宣しくお願い申し上げます。

   最後になりましたが、貴協会並びに会員の皆様のご活躍とご発展を祈念申し上げて、私の就任のご挨拶とさせていただきます。