会報「北のみなと」No.66より

まえがき・ウトロ漁港の概要
  本工事を行っているウトロ漁港は、世界遺産登録された知床国立公園のオホーツク海側の玄関口となる知床半島西側に位置する第4種漁港です。気象・海象の変化が激しい知床海域の緊急避難や北海道有数の水産基地としての役割を担っており、近年では安全で高品質な水産物の提供、ブランド化の推進が求められています。また、地域の再開発、災害時の海上輸送基地としての役割も担っています。


図-1 ウトロ地区整備イメージ(網走開発建設部HPより)

施設の目的
 
ウトロを支える産業としては主に漁業と観光の2点が挙げられます。この漁業と観光の連携を支える基盤として、ウトロ漁港は以下の4つの役割を担います。
  ◆地域水産業の生産流通拠点
  ◆大規模自然災害に備えた地域防災拠点
  ◆安全安心な水産物の安定供給基地
  ◆つくり育てる漁業の支援拠点
  整備中の漁港(図-1、図-3) が完成すると、漁船の大型化や背後用地を確保でき、高度な衛生管理に対応する人工地盤により新たな漁港空間を得ることができます。また、知床観光船を新港地区の「特定目的岸壁」に移動して道の駅との連携による観光交流の促進を図り、また、災害等により国道が遮断された場合の緊急物資を輸送できる基地としての役割も担っています。

工事の概要


 本工事は、ウトロ地区人工地盤の内、スロープ基礎部の工事を行うものです。施工順序を図-2に示します。基礎杭は場所打ち杭で、全周回転機で掘削します。基礎・地中梁工は基盤が海水面下なので水圧に抵抗するために厚さ1.3mの均しコンクリートを打設します。本工事では、柱部だけがPC構造となっています。


図-2 施工断順序


図-3 ウトロ地区人工地盤イメージ(網走開発建設部HPより)

現在の施工状況
 本工事は7月下旬に着手し、これまでに基礎杭工と仮設工の一部(土留鋼矢板を打設するために地盤の先行掘削)を終えました。現在(11月上旬)、土留め鋼矢板の打ち込みと基礎・地中梁工の掘削を開始したところです。場所打ち杭・先行掘削の一部では、岸壁背面の裏込石・埋立土砂の割石・堆積砂層の巨大な玉石が混在するので、全周回転掘削機で施工しています。今後は、水中コンクリートで均しコンクリートを打設し、水替え後、基礎・地中梁(RC工) および柱(PC工)を施工していく予定です。


図-4 施工断面図

作業場の留意点
 本工事は、ケーソンで囲んだ範囲を埋め立てた場所に人工地盤を建設する工事です。陸上工事と同様の工事に見えますが、基礎・地中梁は水面下の施工なので潮位の影響を受けるために、無尽蔵に湧き出る海水への対処が施工上の問題点となっています。また、スロープ部分の施工なので長方形の施工範囲(写-1)をさらに縦長に分割した工区割りになっており、作業ヤードと工事道路を確保するために、隣接工区との施工調整を綿密に行って工事を進めています。


写-1 現場全景                     写-2 全周回転機の掘削状況

あとがき
 漁業・観光を中心に発展してきたウトロ漁港ですが、世界遺産登録を契機として更なる発展が展望されています。現在施工しているウトロ漁港の工事が、発注者の計画に応える品質を確保し、地元の漁業関係者と観光関連の方々に末永く活用していただけることを望みながら、職員・作業員一同、安全管理に細心の注意を払いながら、竣工まで無事故無災害で施工してまいります。