会報「北のみなと《No.72より

◆ 施設の目的と工事概要

  東北海道は全国有数の大規模地震発生地帯ですが、釧路港では災害時にも利用できる耐震性の高い施設が未整備の状況にあるため、東港区の釧路川河口部に大規模地震災害発生時に緊急物資輸送の拠点となる耐震強化岸壁(*9m)を中心とした大規模地震対策施設を整備しています。この耐震強化岸壁は、近年のクルージング需要の増加に対応した旅客船岸壁として常時利用し、隣接する観光交流施設と連携して、地域の観光・交流活動を推進する空間を創出するものとして期待されています。
 
  本工事は、整備する耐震強化岸壁等(総延長約390m)の上流側(延長約95m)で、岸壁背後に土留めとして既設地盤の固化処理を行い、水深*2m程度の既設物揚場施設を撤去・床掘して、ケーソン式係船岸の下都構造を築造するものです。工事内容は以下のとおりです。

    ・陸上地盤改良工 土留(固化処理)83本
    
・構造物撤去工 本体ブロック撤去 84m
    ・土工 土砂掘削 2,400㎥
    ・床掘工 硬土盤床掘 15,800㎥
    ・基礎工 捨石投入 4,900㎥、捨石均し 1,580㎡
    ・本体工(ケーソン式) ケーソン据付 4函
    ・裏込工 防砂目地板取付54m、防砂シート敷設 489㎡


図*1 施工位置図

◆ 工事の流れ

  本工事は今年の3月から施工を開始し、固化処理施工機械の基面整備後、4月から既設地盤の固化処理を実施しました。固化処理の設計基準強度到達確認後、土砂掘削、既設物揚場施設の撤去、硬上盤床掘を実施し、8月には捨石投入・均し、9月に入ってケーソン据付を実施しています。

  現在は工事の終盤で、防砂シートの敷設および取付部の捨石均しを進めています。


図*2 施工フロー図

◆ 工事の留意点

○固化処理の施工管理

  既設構造物撤去、土工及び床掘工に先立って施工する、深層混合処理工法による岸壁背後地盤の固化処理には、以下の目的があります。

  ・自立土留壁として機能させること
  ・地震時の液状化防止対策
  ・ケーソン背面土圧の軽減
 
  これらの目的を充分機能させるためには、着底改良杭として支持層へ確実に着底させる施工管理が必要です。深層混合処理工法においては、処理機モーターの電流値や貫入速度などによって着底判定を行っていますが、支持層の上部近傍に判定基準と同様な挙動を示す砂礫層があり、支持層との誤認を防ぐため、支持層調査ボーリングを平面的に複数本実施し、支持層の平面的な想定ラインを設定しました。
 
  また、土留壁体として改良杭同士が連続的に接合していることが重要で、改良杭の位置、施工機械の鉛直度などを精度良く管理し、完了後には事後調査ボーリングに傾斜ボーリングを取り入れ、隣り合う改良杭の連続接合性を確認しました。

○近隣工区との工程調整

  本工事は大規模地震対策施設整備という緊急性の高い事業であるため、下流側の同種工事、岸壁上部工事、岸壁沖合いの浚渫工事が同時進行しており、綿密な工程調整、使用船舶や施工ヤードの共有等により、過密なスケジュールを遅滞なく進めるよう努めています。


図*3 施工断面図


図*4 支持層調査ボーリング位置平面図

◆ あとがき

  釧路港は東北海道の物流拠点港湾としてのみならず、国際競争力向上のために整備される「国際バルク戦略港湾(穀物)《選定に応募し、更なる発展を目指しています。大規模地震や津波が頻発する地域には、「大規模地震災害発生時の緊急物資輸送拠点《としての機能を持つ施設が上可欠であり、今回の工事でその機能の充実と国際競争力を持つ重要港湾整備に携わることができたことを誇りに感じています。
  工事の施工にあたり、ご指導いただきました釧路港湾事務所及び関係機関の皆様、施工時にご協力いただいた隣接工区施工業者並びに港湾関係者の皆様に深く感謝申し上げます。