会報「北のみなと」No.72より


  北海道開発局は、平成22年7月20日札幌第一合同庁舎で平成22年度(第30回)優良工事等表彰(局長表彰)の表彰式を挙行した。21年度に完成した工事、完了した業務の中から優良工事35件を施工した43社、優良業務20件を請け負った16社と技術者64人の功績をたたえた。

  一方、営繕部長表彰・各開発建設部長表彰には、工事56件69社、業務35件27社が選ばれた。 今回、工事部門の当協会員が受賞した局長表彰は、港湾・空港・漁港工事で @鰹シ本組が施工した「久遠漁港島防波堤建設工事」 Aみらい建設工業鰍ェ施工した「石狩湾新港-10m岸壁耐震改良工事」 B岩倉建設鰍ェ施工した「室蘭港築地地区岸壁-10m改良工事」C村井・山田JVが施工した「釧路港島防波堤B部背後盛土その他工事」の4件 5社が受賞した。

  各開発建設部長表彰は、港湾・空港・漁港工事で@渡辺・りんかい日産JVが施工した「根室港花咲地区物揚場改良その他工事」A島田建設(株)が施工した「網走港物揚場改良工事」B(株)中田組が施工した「稚内中央ふ頭建設工事」の3件4社が受賞した。


〔工事目的〕
  本工事は、港内の静穏度向上を目的とした防波堤建設工事です。本工事により、利用船舶の安全航行や荷捌 きの円滑化等、安全、安心な漁業活動が図られるほか、港内の静穏域を利用した蓄養殖漁業の展開が図られ、つくり育てる漁業への効果も期待できます。

〔工事概要〕 
  島防波堤:基礎工・本体工・上部工・消波工22m、被覆根固工29.2m、撤去工・仮設工 1式

〔表彰理由〕
  本工事を施工するにあたり、夜間工事において想定される騒音等のリスクを戸別訪問による周知を徹底し、理解を得られる等の丁寧な地元説明を行い、苦情の発生を未然に防ぐことで工事の円滑な進捗が図られました。 また、NETIS登録技術のうち、敷鉄板を固定するリングプレート使用の試行技術を積極的に活用し、活用効果調査票を提出するなど新技術への取り組みが顕著であり、その結果、再整正を行わなくても済むなど効率性の高い施工管理が実現できました。安全管理面では、冬期問に係わる海上作業という厳しい施工条件の下で、本社役員が出向いての安全点検、指導を通常期よりも重点的に行うなど、会社組織をあげて安全衛生を確保するための体制を整備することで、労災事故発生を未然に防止するなど優良工事としての評価に値するものでした。


〔工事目的〕 
  本工事は、石狩湾新港花畔ふ頭3号-7.5m岸壁(既設)を-10mに増深するとともに、耐震強化岸壁に改 良するものです。本耐震改良工事により、大規模地震発生時における大型船舶に対応した緊急物資輸送拠点が 整備されます。

〔工事概要〕 
花畔地区
     岸壁(-10m)(耐震)(改良)L=77m
     撤去工・土工・仮設工 1式、本体工・上部工 77m
     地盤改良工 76m、舗装工 2,160u
     付属工・照明移設工 1式  

〔表彰理由〕 
  当該工事は、既設鋼矢板岸壁の耐震改良工事ですが、岸壁の背後用地を供用させながら施工する必要があり ました。このため、岸壁の利用者と工程や作業ヤード等に関する調整を頻繁に行うとともに、既存構造物への 影響を動態調査でリアルタイムに把握して施工を行いました。
  また、岸壁背後の地盤改良にあたっては、土圧低減が可能な「SDM-Dy工法」を採用し、改良深度の管理、 セメント添加量の把握、改良後の地盤強度(杭中心部及び杭端部)の確認を適切に行って、改良目的を達成し ました。
  さらに、既設構造物の移設では仮設土留め工法を採用するとともに、既設上部工の撤去では、コンクリート落下防止受枠を設置して、コンクリート殻の海中散逸の防止徹底を図りました。 以上、限られた条件下での施工である中、新たな工法にて環境にも配慮した施工を行い、他の模範となるものでした。


〔工事目的〕 
  本岸壁(-10m)は、保管施設としての倉庫が立地し、現在もバルク貨物を取り扱う重要な岸壁施設です。 しかし、建設後約50年経過し、本体鋼管杭の耐力不足や上部工の断面欠損、コンクリートの剥離及びそれに伴 う鉄筋の露出など老朽化が進行しており、このまま放置すると施設自体の崩壊を招く恐れがあるほか、エプロ ン部分が狭隘なため、施設の非効率な荷役を強いられています。
  このことから、既存施設の延命化を図るとともに、エプロン部の拡幅により荷役作業の効率化を図るため、 岸壁(-10m)の改良を行いました。

〔工事概要〕 
岸壁(-10m):基礎工・本体工(杭打設)44.6m、
           
本体工(ストラット据付)45m、
            上部工・渡版工15m、PC桁工30m、
            付属工・撤去工・仮設工 1式 

〔表彰理由〕 
  本工事は、背後に倉庫が近接し船舶も頻繁に行き交う岸壁周辺での施工であったため、港湾管理者や海上保安部はもとより船主、パイラーも加えて綿密に工事と船舶利用に係わる調整を行い、積極的に安全確保に取り組みました。
   また、作業ヤードが狭隘だったため、大口径(φ1,100mm)鋼管杭の打ち込みに際しては、大型クレーン作業の安全確保のために既設上部工に仮設台を設置し、安全な作業スペースを確保するよう工夫を行いました。 これにより、鋼管杭打設時の安全性を確保出来るとともに、施工管理も確実に実施し、水中ストラットの据付精度の向上も図りました。
 
さらに、上部工底部は+0.5mと潮汐を大きく受ける大変厳しい作業環境でしたが、潮汐を考慮した工程管理を的確に行うとともに、支保工部材と型枠部材の厚さを薄くして作業の省力化を図るなどして、現場条件に適合した施工・工程管理を向上させました。
  このように、限られた現場条件において創意工夫により、安全性と施工管理、工程管理の向上を図ったことは他の模範となるものでした。


〔工事目的〕 
  釧路港西港区は、平成10年6月「環境と共生する港湾」としてエコポートモデル港に指定されるとともに、 当該島防波堤が「水生生物との協調型防波堤」として、全国で初めて直轄によるエコポートモデル事業に認定 されています。この事業は、浚渫によって発生する土砂を再利用し、島防波堤のケーソン背後に大規模なマウ ンドを造成し、従来の静穏度の確保機能に加え、建設コストの縮減や資源リサイクルを追求するとともに、新 たな水生生物の生息環境を創造するものです。

〔工事概要〕 
島防波堤B部:背後盛土工386m(土砂投入)・270m(腹付土砂)、
            吸い出し防止工778.5m、 背後盛石工206.1m、
            土留護岸工301.3m
島防波堤C部:消波工60.3m

〔表彰理由〕 
  本工事は、太平洋特有の「うねり」や大水深(-15m)という厳しい海象条件を克服するため、大型、中型の船舶機械や人員を現場環境変化に応じて適切に配置して、的確で迅速な体制で工事を実施しました。特に施工管理については、最新式の精密測深器や立体模型を独自に使用することにより、出来形管理に創意工夫をこらし構造物の品質向上を図りました。また、施工箇所は航行船舶が頻繁に航路をまたぐだけでなく、複数の工事が輻輳する現場条件でしたが、漁組や船舶代理店等の各関係機関をはじめ、輻輳する工事関係者と連携調整を綿密・適切に行いました。このように、限られた条件下で施工管理を適切に行い、無事故・無災害で工事を完了させたことは高く評価でき、他の模範に値するものでした。