会報「北のみなと《No.73より


出席者
◎北海道開発局
    栗田港湾空港部長、笹島港湾計画課長、桑島港湾建設課長
    大千里港湾行政課長、中嶋空港課長、堀越水産課長
    遠藤港湾計画課港湾企画官、岸港湾建設課港湾保安全推進官
◎日本港湾空港建設協会連合会
    川嶋会長、村上専務理事、守屋労働・安全・税制部会部会長
    水口契約・設計積算部会委員
◎北海道港湾空港建設協会
    宮﨑会長、吉本副会長、藤田副委員、澤向副会長、西村副会長
    技術委員会宮本副委員長他8吊

◆ 要望項目

  私ども「日港連《は、「港湾空港建設技術の開発及び向上《と「港湾空港建設業の健全なる発展及び社会的地位の向上《を目的として、1984 年(昭和59年)4月、港湾空港整備を担う建設業者が加入する都道府県協会を結集し設立された団体です。 
  由来27年、我が国経済を支える港湾・空港のインフラ整備に携わり、建設業の立場から我が国の発展に寄与してまいりました。
  この間、ご当局には当連合会の業務運営に関し、格別のご指導ご高配を賜ってまいりましたことに深く御礼申し上げます。

  さて、私ども日港連会員企業の経営環境は、長年に亘る公共事業抑制策に加え、リーマンショックを契機とする世界同時上況の後遺症が響き極めて厳しい状況にあります。
  しかも、政権交代による少子・高齢化社会対応優先への急激な政策転換は、私どもを2~3年先さえ見通すことができない暗黒の世界に導きました。 
  このところの円高基調の経済も拍車をかけ、民間の設備投資も見込めないとなれば、いよいよ海上工事を担う生命線ともいえる作業船の保有・維持管理、施工技術の継承等核心部分の整理合理化にもナタを振らなければならない瀬戸際に追い詰められております。
  前述のように、私ども「日港連《は、国民が豊かで安心できる社会生活基盤を構築し、これを次世代に引き継ぐことが現在に生きる我々に課せられた最も重要な責務であると認識し、品質の高い港湾・海岸・空港関係社会資本づくりに努めてまいりました。と同時に、建設業が雇用の機会を提供し経済を支える、とりわけ格差の著しい地方域において、地方再生・地方の活性化・地方の自立などの課題、並びに災害対策・防災対策を通じた地域の安全の確保にも大きく貢献して来たと自負し、今後ともそのような存在であり続けたいと考えております。
  ついては、私どもが抱えております当面の懸案事項等につき、下記のとおりご要望申し上げますので、格別のご高配を賜りますよう切にお願い申し上げます。

1. 港湾関係社会資本の着実な整備

  島国である我が国の経済発展と国民生活の安全・安心を支えるために欠かせない港湾関係社会資本は、長い間抑制された公共事業費の削減策により著しく整備が立ち遅れております。加えて、高度経済成長期に建設した施設等の老朽化も顕著となり、これらへの対処も急がれております。
  「選択《と「集中《の施策を否定するものではありませんが、国際競争力の強化のほか、地域経済の活性化や差し迫る巨大地震・津波等への対処のため、各港の老朽化対策も取り込んだ港湾関係社会資本の整備を図るようお願いします。
  全国津々浦々の災害・防災対策には、日港運会員企業の活動が強く求められていると自負しておりますが、私どもの存続・育成も念頭に、今後の事業展開をご検討いただきますようお願いする次第です。

 回答
(北海道港湾整備事業)

  現在、苫小牧港、釧路港、石狩湾新港、羽幌港、沓形港、香深港の6 港において、耐震強化岸壁の整備を行っているところであり、引き続き、大規模地震時の海上からの緊急物資輸送の確保のため、整備の推進を図ってまいりたい。
  また、平成28年度予算の概算要求における港湾整備予算については、国費144億円、対前年度比O.87と非常に厳しい状況となっているが、新規事業として、苫小牧港で総事業費 94億円のRORO船夕一ミナル改良、函館港で総事業費40億円のフェリーターミナル整備の要求を行っているところである。苫小牧港の新規事業については、既存施設の老朽化対策と併せて、RORO船荷役の効率化を図る事業となっている。
  北海道の港湾では、鋭意、老朽化対策に取り組んでいるところであるが、今後の老朽化施設の急増が懸念されるところ、引き続き、地域活性化や防災対策等を含めた老朽化改良に取り組んでまいりたい。

(北海道空港整備事業)

  平成23年度航空局関係概算要求の基本方針では、平成23年度からの3年間を「集中改革期間《と位置づけ、成長戦略に基づく航空行政の改革を推進し、徹底的なオープンスカイの推進等を実現していくこととしている。このためには、3年間に限り航空燃料税の大幅な軽減を実施し、整備事業においては、成長戦略に基づく首都圏空港の機能強化に関する事業は着実に実施することとし、その他の空港整備については、航空機の安全運航の確保に上可欠な事業等を最優先としつつ出来る限りの経費の縮減を図ることとしている。
  このように厳しい状況ではあるが、広域分散型社会を形成している北海道においては、利便性の高い高速交通ネットワークの形成を図る上で空港は重要であり、空港の機能の保持のための改良や安全・安心の確保のための耐震強化を推進することとしている。

2. 港湾・空港・海岸関係事業の適正かつ効率的な実施

  港湾・空港・海岸事業の実施に際しましては、私どもの意見もお酌み取りいただき「プロジェクトX2010《等に反映いただいておりますことに改めて感謝申し上げます。
  しかしながら、発注工事量の減少に伴い、あまりにも過熱・過激な競争入札が続いており、何とか受注できたとしても適正利益はもちろんのこと工事原価を確保することさえ危ぶまれているのが現実で、日港連会員企業の経営を脅かす最大の要因であるといっても過言ではありません。
  このため、次の事項に関し更なるこ配慮・ご検討を賜りますことをお願い致します。

(1)入札方式・総合評価方式の更なる適正運用

  ① 過剰・過激な競争環境の是正・改善
  ② 調査基準価格の見直し(一般管理 費30%の引き上げ)
  ③ 技術ダンピング(オーバースペック)対策の改善及び総合
     評価管理費の評価
  ④「工事原価による競争《など新たな入札方式の検討
 

 回答
 

過剰・過激な競争環境の是正・改善

 

  企業及ぴ技術者の技術力を重視する方式の活用は、公共工事の品質確保の促進を図る観点から、引き続き受注者が適切な利潤を得られる入札環境を整えることが重要と認識している。

調査基準価格の見直し(一般管理 費30%の引き上げ)

 

  低入価格調査基準価格については、平成21年 4月 3日以降の入札公告を行う工事を対象に、公共工事の品質確保、上適格業者の参入による”いわゆるダンピング受注” の排除等のため、再度引き上げを行ったところである。
  現場管理費や一般管理餐については、工事実施上最低限必要と考えられる額を計上されていると思慮するが、ご要望の調査基準価格の「一般管理費30%《への引き上げについては、本省に伝えたい。

技術ダンピング(オーバースペッ ク)対策の改善及び総合評価管理費の評価

 

  昨年度の要望を踏まえ開発局において、港湾部門は他部門に先駆けて今年度より入札説明書に評価しない提案を明記するなど、オーバースペックの防止には鋭意、取り組んでいるところである。
  オーバースペックの個別事例については、本省港湾局で設置した「オーバースペック等設定《作業部会にて現在検討中である。
  なお、総合評価管理費については、現行の積算基準体系によれば、評価における技術提案作成等に係わる経費について「企業の経営管理と活動に必要な本店及び支店における経費《と規定した一般管理費等に含まれると認識している。

総合評価方式については、制度改革の余地があることから、国土交通省全体による「国土交通省直轄事業における公共工事の品質確保の促進に関する懇談会《(委員長:小澤一雅東京大学院教授)において、入札・契約制度全般に亘る議論が進められており、新たな競争入札方式の検討については本省に伝えたい。

(2)より双務性の向上に配慮した事業実施

  ① 入札工事説明会、入札参考資料(金抜き設計書等)の入札前
     開示等、受発注者間におけるより透明性の高い条件明示の向上
  ② 総価契約単価合意・出来高確認手続きの合理化、迅速な設計
     変更の実施及び施工プロセス検査を考慮した提出書類の削減等
 

 回答
 

当局では昨年の入札談合事案を踏まえ、WTO対象工事等を除き、入札工事説明会は開催していない。 入札参考資料については見積参考資料(積算に用いる係数等を明示した資料)を公表しているが今後も条件明示向上に向け取り組みを行う所存である。

現在、将来の本格導入に向け、国土交通省港湾局にて包括的な運用ガイドライン(案)の検討をするとともに、各試行メニューの適用範囲について検討しているところ。
  設計変更は額の大小に拘わらず随時、適切に行うことは当然のことと認識し、対応している。
  受注者からの質問、協議への回答は、基本的に「その日のうちに《行うこととし、即日回答が困難な場合は、いつまでに回答が必要なのかを受注者と協議のうえ「回答期限《を設けるなどワンデーレスポンスの取り組みを行っている。また、契約に係わる協議に伴う変更指示は書類により行うとともに、速やかに対応するよう更に徹底を図りたい。
  本州で実施している設計変更協議会を当局においては、工事円滑化確認会議、また、三者会議を技術調整会議(又は工事円滑化会議)と呼んでいる。
  工事円滑化確認会議は今年度から全工事実施することとしており、積極的に開催し活用願いたい。
  また、開発局では受注者からの具体的な設計変更の問題事例提起を受けて、昨年度、実務者向けの設計変更事例集も作成したところであり、本ガイドラインの活用とあわせて円滑な設計変更の実施と現場担当者の負担軽減を図ってまいりたい。 
  「施工プロセスを通じた検査《試行工事においては、品質検査員により施工状況等を施工プロセス検査チェックシートにおいて確認していることから段階検査こおいては、受注者が用意する警類を簡素化できることとしている。
  受注者が用意する資料は、出来高内訳書及び申請書、出来形図とし、原則として現場代理人のみが立ち会うものとしている。
   今後も、試行を通じて、問題点・課題などの把握、改善を進めてまいりたいので、貴連合会の協力をお願いしたい。

(3)作業船の保有・維持管理に対する助成策等の検討  

 回答
 

 

  港湾工事を実施する上で作業船が重要な役割を果たしていることは十分認識している。作業船の保有・維持管理に関する諸課題等については、十分意見を伺わせていただき、本省に伝えたい。

(4)港湾管理者等地方公共団体の港湾・海岸・空港関係事業の
     適正実施及び関係職員の育成に係わる適切な助言・指導   

 回答
 

 

  当局では、北海道・札幌市とともに「公共工事の品質確保の促進に関する北海道連絡協議会《を設立し、総合評価方式や工事成績評定の普及啓発を行っているところである。
  また、当局職員を対象とした品質確保に関する研修への地方自治体職員の受け入れ等も実施しており、今後も引き続き総合評価方式の普及に向けた取り組みを進めてまいりたい。
  施工・積算基準等については、各種講習会等の開催などにおいて、情報提供を図ってまいりたい