北海道港湾空港建設協会

会報「北のみなと」No.73より

◆ 開会挨拶
北海道港湾空港建設協会会長宮﨑英樹		全道各地から130名の方々にお越しいただき盛大に開催されることを大変嬉しく思っております。今回の報告会につきましては、技術委員会で基本的に難易度の高い工事、あるいは一度も発表の機会がなかった会員企業の中から評価点の高い工事が選定をされております。多くの工事は1月から3月に終わりをむかえるという事がございますので今回発表の工事は平成21年度に完成をみた工事が対象となっております。

港湾工事が年々厳しくなっております。建設工事全般が良くない訳ですが、取り分け港湾工事が突出して悪いというのは何故なのか理解に苦しむところですが、こんな非常に条件の悪い中、皆様方の真摯な努力の結果が、技術力の向上につながっていくのだという風に考えているところでございます。
本日発表されるお三方の日頃の研鑽の結果が如実に表れて今日の発表ということになったのだろうと思っております。大いに期待を致しておるところでございますので、よろしくお願いをしたいと思います。本日は皆様大変お忙しい中お集まりいただきましてありがとうございました。

◆ 来賓挨拶
北海道開発局港湾空港部港湾建設課長桑島隆一氏		ご紹介いただきました桑島です。北海道港湾空港建設協会におかれては、本港湾空港工事報告会を毎年開催され、会員各位の技術の研鑽・開発に絶えずご努力されておりますこと、心より敬意を表します。またお集まりの会員の皆様には、北海道開発局が実施している社会資本整備、とりわけ港湾・空港及び水産基盤の整備に対しましてお力添えをいただいておりますこと、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

さて日本海、太平洋、そしてオホーツク海と異なる3つの海に囲まれる北海道の港湾・漁港では、積雪寒冷で流氷も到来する冬期の厳しい自然環境、大規模地震や津波災害等の防災、さらには既存施設の老朽化が加速する中での戦略的な維持管理や改良・更新コストの抑制など、様々な課題への対応が今、求められています。
このため、私ども北海道開発局では平成16年7月に｢北海道の港湾・漁港技術開発ビジョン｣を策定し、これまで技術開発の推進に取り組んできておりますが、その策定から6 年余りが経過する中、新たな要請や社会経済情勢の変化等を踏まえて、現在、これからの技術開発を進めていくために、『北海道の｢みなと｣と｢技術開発｣』という資料を新たに取りまとめております。北海道の港湾工事あるいは水産基盤の整備を進める時に、どういった技術開発を意識して進めていくべきかを体系的に取りまとめようという資料であります。現在、その取りまとめ作業は最終の段階でまだ終わっていないので、正式な発表は新年度の4月になってからの見込みですが、本日はせっかくの機会ですので、説明資料はパワーポイントだけになりますが、皆様にその概要をご報告申し上げます。お気軽にお聞きください。

今、お話した技術資料の『北海道の「みなと」と「技術開発」』では、平成20年7月に閣議決定されました北海道総合開発計画等の着実な推進を視野に、「みなと」に対する様々な要請に応えうる技術開発を戦略的に進めるための目標を5つ定めております。

1つ目の目標は、北海道の一番のポテンシャルとして誰もが言われるところへの貢献、「食料供給力の強化」です。釧路港では穀物ターミナルとして今、戦略バルクの提案応募を行い、選定を待っているところです。世界の食料自給が逼迫していく、そういった中で北海道が果たすべき役割はますます重要になっています。そういった時に、食料の供給を安定的に図る港湾の基本的機能、さらには漁港における水産物の安定供給や物資輸送の高度化を図ることも当然重要であるということです。これが1点目の技術開発目標です。

2つ目は、「自然共生・低炭素・循環型社会の形成」です。これまでも北海道のきれいな海、良好な海洋環境を保全すべく釧路港のエコポート事業(島防波堤)など、自然との強制調和を図りうる港湾・海洋構造物の整備を進めてきていますが、これからは先般、NHKニュースでも紹介された船舶版のアイドりングストップなど港湾活動におけるクリーンエネルギーの活用などの技術開発を進めてまいります。

3つ目は「地域活性化への貢献」です。今は、クルーズ観光が大人気です。北海道では東京方面から飛行機で来て、小樽港等からクルーズ船に乗って利尻島を経由してオホーツク方面に行かれるといった、いわゆる「飛んでクルーズ」が人気を博し、リピーターの方々も多い状況です。そういった観光を含めて港湾という海の玄関口で、まとまった賑わい交流空間を上手く活用して地域の活性化に貢献していこうというものです。

4つ目、これは港湾の本筋とも言うべき「物流機能の強化」です。農業や製紙業の産業の原材料等は、当然のことながらその多くは海外から輸送されて港湾で荷役されています。そして年々その船舶は大型化し、荷役システムも高度化しております。さらに生産から流通加工まで一貫した安全な水産物の供給システムの構築が目指されている中での水産基盤の整備をこれからどうしていくか、といった技術課題もあります。こういったことに対応することが、 4点目の技術開発目標です。

最後の5つ目は、安全安心の確保で、「災害への備え」という目標です。室蘭港に在場している防災フロートは、平成12年の有珠山噴火を契機に大規模災害時における緊急物資の輸送や住民避難のサポートなどを目的に補助事業として建造されました。そしてより広域的な防災に対する国の責務の高まり等から、昨年、国が保有することとし、開発局が室蘭市からフロートを買い取りました。今後は、通常時は港湾工事用の台船として使用するとともに、地震・津波や火山噴火等の大規模災害時においては、広域的に防災フロートを派遣して、その活用を図ることとしています。

また最近の動きとしては、2009年からのサハリンⅡプロジェクトの本格稼働に伴って稚内沖にタンカーや LNG船が多数航行する状況があります。既に年間で300隻にも達する状況です。このため稚内沖海域における油流出事故のリスクが高まっているため、稚内港の港湾業務艇に油回収機能を付加できないか、勉強を始めたところであります。
以上、「食料供給力の強化」、「自然共生・低炭素・循環型社会の形成」、「地域活性化への貢献」、「物流機能の強化」、「災害への備え」が今後の 5つの技術開発目標です。

そして、これら5つの目標を重点的・積極的に進めるために、具体的な技術テーマを8つ設定しました。

1つ目のテーマは、「みなとの利便性の向上」です。例えば、太平洋の苫小牧港では長周期による利用障害の問題があります。その他にも漂砂による港内埋没や静穏度対策など、みなとを利用するに際しての切実な要請への対応です。

2つ目は、「水産物の安定的な供給力の強化」です。日本の漁業生産がピーク時の半分まで減少し、水産物の自給率も 6割程度に低迷する中、国内で約1/4の漁業生産を占める北海道にとっては重要な技術テーマです。

3つ目、4つ目は、「みなとの活動における環境負荷低減の推進」、「みなとの施設のライフサイクルコストの縮減」です。資源のリサイクルからクリーンエネルギーの活用、 C02の抑制対策、そして今後、膨大な施設の老朽化が見込まれる中で、既存ストックの有効活用を図るための戦略性を持った整備・管理と診断技術の開発等に関する技術テーマです。

その他にも、「地域に貢献するみなと空間の形成」、「輸送機能の向上」、「安全・安心を確保するみなとづくり」、「調査・設計・施工の高度化」の4つの技術開発テーマがあります。多くのイベントが行われ、賑わいの空間を形成する歴史的な港湾施設ではその保存・補修技術が課題となっています。また海上輸送の大型化やユニット化への対応技術や地震、津波、高潮、流氷等の自然災害に対峙して地域の安全・安心を確保する技術開発、そして厳しい財政事情ゆえに従来にも増して整備期間の短縮やコスト縮減に寄与する技術開発を推進することも大事なテーマです。

以上が技術開発を着実に進めていく上で設定した８つのテーマですが、こういった技術開発をどういう体制や協力関係のもとで進めていくのが効率的なのか。私ども役所の開発局のほかにも、関係する方々としましては、大学の先生、皆様のような民間事業者の方が、さらには港湾や漁港を管理・利用される方など、いろんな機関、団体・個人の方々がおられます。そういった中で、関係者がそれぞれの立場で、各々の良いところを出し合いつつ、また私どもがマネージメントすべきところはしっかりその責務を果たしながら、技術開発の推進に向けて関係する者が積極的に交流・連携を図っていくことが、技術開発には一番効率的だと思っております。新年度以降、私ども港湾、水産基盤の整備においては、これらの技術開発を鋭意、進めていく所存ですが、皆様におかれましてもその開発推進にお力添えをいただきますよう、何とぞ宣しくお願い申し上げます。

以上、雑駁でございますが、技術開発についてのお話をさせていただきました。今日の工事報告会、実り多い報告会になりますとともに、ご参加のみなさんのご活躍を心より祈念申し上げ、これで終わらせていただきます。どうもご静聴ありがとうございました。