会報「北のみなと」No.73より


(講演いただいたが誌面の都合により内容を要約させていただきました)


図-1 −9m耐震強化岸壁施工箇所



  釧路港東港区−9m耐震強化岸壁の施工で、地盤改良の固結工法としてJACSMAN工法を採用している。水際線での固化改良体による自立土留壁の適用は、他に類がなく全国的に初めての事例である。

  深層混合処理工法の機械式撹絆と噴射式攪拌の性能を併せ持つ工法で、機械攪拌翼の先端から交差噴流を高圧で噴射させることにより、大径φ2300mmの改良体を造成することができる工法である。
[主な特徴]
@ 地盤に影響されずに改良 体の径を確実に制御できる。
A 攪拌性能の向上により、高能率施工が実現し、均一な改良体を造成できる。
B 既設構造物との、あるいは改良体相互の密着施工が確実・容易にできる。
C 大断面(従来の4倍強)の改良体を造成できる。
D 交差噴流を噴射、停止することによって、任意の深さで改良体の径を変えることができる。
E 既設構造物への施工時の変位の影響を軽減できる。

1) 前提条件
既設の−2m及び−3.5m物揚場を−9m耐震強化岸壁に改良する。
2) 制約条件
改良箇所全面は航路であり、前だしによる改良ができない。
オープン掘削による施工(矢板式)を検討したが、掘削法面が背後地までおよび、ヤードの確保が困難であり陸上機械による施工が困難である。
上記理由により深層混合処理による自立土留壁を選定した。
3) 構造面から見た当該工法の施工目的
仮設時は旧施設の取り壊しのための自立留壁。本設時は新設ケーソンとの複合構造体となる堤体。


図-2  JACSMANの模式および出来形

1) 施工場所
    作業スペースが狭く、周辺に家屋が密集。
2) 地盤条件
    改良対象地盤は砂・礫じり砂(N 値5〜20程度)及び砂礫(N値15 〜35程度)であり、その下部には支持地盤となる砂岩(N値20〜 50)程度が存在している。深度−11m以深の箇所にシルト混じり砂(N値10以下)が点在しており、鉛直方向においてもセメント配合量を変える必要があった。
3) セメント配合量
    通常の地盤対策マニュアルとか深層混合マニュアルからセメント配合量を決定した場合、過大な添加量となる可能性が大きいことから、現場試験から直接セメント添加量を設定するのがベスト。
  σ28まで待っての施工は工期的に難しいことから、現場試験と室内試験の双方からセメント添加量を決めることとし、現場試験の7日強度と室内試験における強度の伸び率から添加量を決定した。
4) 事後調査による品質確認
    改良体の機械撹絆部および噴射式攪拌部からボーリングによりコアを採取し一軸圧縮試験を実施し確認した。
  その結果、機械式と噴射式攪拌部では大きな差異は見受けられず、両者の均一性が確認された。

     固化改良体は、自立土留壁として機能させる必要があることから岩盤への確実な着底施工が必要条件。
  岩盤の上部には岩盤と同程度のN 値である砂礫が存在しており、通常の着底管理(貫入速度・攪拌モータ電流値)では着底が分かりにくいといった課題がある。
  この施工上の課題に対し、追加ボーリング調査を実施して岩盤想定ラインの精度を高めて1セットごとの改良位置について想定深度を設定した。また、先端オーガーが岩盤に到達した際には瞬間的に振動が発生すること、撹絆翼が岩盤に到達した際には継続的な振動が発生することも着底管理の補助的な方策とした。

     自立土留壁の掘削時変位の有無を確認するため、改良体中に傾斜計を設置し挙動を計測した。改良体の変位量は杭頭部で最大4〜5mm程度の変位で、自立土留め壁として十分機能していることが確認された


図−3 標準断面図


  当該工事は初めて水際線で固化改良体による自立土留壁が適用された事例である。
  交差噴流式複合攪拌工法により確実な改良体同士のラップ施工・改良体同士の密着化を図ることにより、水際線であっても十分に自立土留壁として機能することが確認された。


写真-1 旧岸壁の取壊し掘削